こんにちは、八楽株式会社の佐藤です。
現在、中国の翻訳業界が「黄金時代」と呼ばれていることをご存知でしょうか?
同国の翻訳市場はグローバル化の波を受けた急速な拡大段階にあり、日本の翻訳会社にとっても魅力的な市場となる可能性があります。本稿では、これまでの中国翻訳業界の歴史と、同業界が現在抱える問題点について紹介していきます。
中国 翻訳業界の歴史
1.1970年代まで
この頃中国の翻訳業は、民営化されていませんでした。翻訳を行う機関は、主に政府機関や国営企業などの公的機関であり、外部からの依頼を引き受けることもなかったそうです。また、日本における日本翻訳連盟のような、翻訳者を代表する機関も存在しませんでした。
2.1980年代~
この時期に、改革開放および市場経済の進展に従って、中国国内における翻訳の需要が徐々に高まってきました。また、需要の高まりとともに、翻訳業が民営化しました。1982年には、中国の翻訳業界を代表する機関Translators Associations of China (TAC)が設立され、1990年代後半には多くの民間翻訳企業が出現しました。1998年までに登録された翻訳企業は、北京だけでも109にのぼるそうです。
3.21世紀
21世紀に入ると、グローバル化の影響により、中国の翻訳市場が急速に拡大します。2002年までに北京で登録された翻訳企業数は800以上にのぼり、中国全体では3,000以上とも見積もられています。もともとは小規模で労働集約的であった中国の翻訳業界ですが、この時期に自動翻訳ソフトが普及し、生産性の向上に成功しました。
中国 翻訳業界の問題点
発展を続けてきた中国の翻訳業界ですが、いくつかの問題点を抱えていることも指摘されています。一つ目は、プロの翻訳者の必要性および重要性を、中国の国民が十分に理解していないことです。多くの国民が、今もなお、「バイリンガルであれば翻訳が可能である」と信じています。
二つ目の問題点は、多くのクライアントが、翻訳を「言語の置き換え作業」と認識していることです。”クリエイティブな仕事”である翻訳に必要な時間を適切に見積もることができず、不当に短い納期を言い渡されることがあると指摘されています。
また、プロの翻訳者が不足していることも問題点の一つです。中国において「翻訳」は、長い間、言語学習の分野としては日陰の存在であったため、翻訳を本格的に勉強している人材が不足しています。翻訳者として活動する人材のうち多くが、翻訳を副業としてこなしており、本業として専門的に翻訳をこなす人材が不足しているようです。
本稿では、中国翻訳業界の歴史と、その問題点についてご紹介いたしました。次回は、中国におけるローカリゼーションと翻訳技術についてご紹介したいと思います。
参考文献
Huang, Y & Huang, C, n.d., ‘The Translation Industry in China: Current Development and Potential for International Cooperation’, Translators Associations of China, http://tac-online.org.cn/en/tran/2009-10/13/content_3182787.htm
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