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2015/09/02

【コラム】イケアの失敗から学ぶ正しいローカライズとは?

みなさん、こんにちは。八楽の森谷です。 本日のテーマは「ローカライズの失敗例」です。 実は本記事は、以前World Jumperというサービスを提供していた頃のブログで掲載していたものなのですが、ご好評につき再掲することとなりました。 グローバル企業ならではの苦労が感じられる内容となっています。 ぜひご一読ください。


ローカライズにおけるIKEAの失敗

今や知らない人はいないであろう世界的な家具ブランド「IKEA(イケア)」。グローバルブランディングの先駆者であり、どの大都市に行ってもイケアの店舗には大勢の消費者が、そして、各国語に訳されたオンラインカタログサイトにも多国籍のユーザーが日々訪れています。 しかし、そんなイケアでもローカライズの際には数多くの失敗をしています。ブランドだからこそ直面するローカルマーケット展開の難しさ。今回は、イケアの失敗例から学び、サイト作成の際に、どのようにローカライゼーションをしていくのがベストなのかを紹介していきます。 273c9746ec110388d56fad2bd7d96681_s

イケアが誤解した宗教のタブー

イケアの2013年版カタログは世界27カ国、38言語に訳され発行されました。サウジアラビア版カタログの中では、女性をすべて削除したものを発行したというニュースが話題を呼びました。このことは世界中のフェミニスト団体から多くの抗議を受けたのです。 サウジアラビアは厳格なイスラム教国家です。そのため、女性は車の運転や投票もNGどころか一人での外出も固く禁じられています。女性を撮影するのもタブーとされており、サウジアラビアへの旅行者は厳重に気をつけなければなりません。

入念なローカルリサーチがカギ

本題はここからです。イケアが犯したミスとは何か? そして、イケアのようなミスをしないために企業はどのようなことに気をつければいいのでしょうか?

1. ローカルマーケットのフィードバックを得る

サウジアラビアに住む人、もしくは精通している人に聞けばすぐわかることのようですが、そもそもサウジアラビアでは男性、女性、子どもであれ、人を撮影した写真はタブーと見なす傾向が強いそうです。イケアの犯したミスとは、女性だけを削除するべきではなく、男性や子どもを残したことでさらに違和感が増してしまったようです。 このように、宗教が消費者の行動を決める役割を果たす国や地域があることを念頭に入れ、ローカルの反応を見る必要があります。以前のブログ「多言語Webサイト作成で見逃しがちな3つのポイント」の中で具体的に説明してありますのでご参考ください。

2. トランスクリエーションでローカル感度をUP

ターゲットとするマーケットで受け入れられるには、マーケットを理解し、そのマーケット独自に考案されたキャンペーンやサイトページを作る必要があります。造語「トランスクリエーション」とは「translation(翻訳)」「creation(創造)」が合わさった言葉で、「文化的背景などを考慮してクリエイティブな発想で翻訳を行うこと」と定義づけられています。自国の文化だけに照らし合わせたサイトや印刷物などではローカルマーケットの好評を得ることは難しいということを忘れてはいけません。

3. 過去の経験から学ぶ

イケアのグローバルブランディングにおける失敗はこれが最初ではありません。サウジアラビアの件の前には、ロシアのコーポレイトサイトに載っていた写真を削除したことも話題になりました。あるパンクバンド(政治的な活動をし投獄された)風を装った数人がイケア店内で撮影された写真を削除したそうです。 a00fcd33bf9d7a34a20ae17a24a03532_s また、タイのカタログでは、同製品名が性的表現を含む翻訳で掲載され物議をかもし、すぐ削除され新しい翻訳にすり替えられたなどの苦い経験があります。世界が注目しているからこそ、事の大小に関わらず叩かれることが多くなるのが世界企業の宿命とも言えますが、入念なローカルリサーチをしていれば防げる事態は断然多いでしょう。

ローカルマーケットを見つめ、声を聞く

実はあのスターバックスも2000年にサウジアラビアで展開開始当時、ブランドロゴからマーメイド(人魚)を削除し、クラウンだけを残したことがあります。その3カ月後には私たちがよく目にするオリジナルのロゴに戻したそうです。それだけ、多くの企業が地域による潜在的な問題、宗教などのファクターに敏感になっていることは確かです。大切なことはローカルマーケットをよく見ること、ローカルマーケットの声をよく聞くことです。