ビジネスシーンでは、WordやPDF、Excel、PowerPointなどのドキュメントが頻繁に利用されます。例えば、海外の研究資料を参考にしたいとき、あるいは製品マニュアルを多言語化して世界市場へ展開したいときなど、ドキュメントの翻訳が欠かせません。
ファイル形式によって翻訳しやすさが異なったり、レイアウトや専門用語の扱いが難しかったりと、翻訳する際に戸惑いがちなポイントがあります。
本記事では、ドキュメントの翻訳をする上で押さえておきたい必要性や自動翻訳にかける際におすすめのツールや方法をご紹介します。
ドキュメント翻訳と必要性
ドキュメントの翻訳は様々な場面で必要となります。事業のグローバル展開や社内文書のグローバル対応など様々ですが、ここではケースごとに翻訳作業を行うメリットと、その必要性を見てみます。
・海外展開や現地とのコミュニケーション
海外の顧客や取引先とやり取りをする場合、契約書や提案書、技術仕様書などは正確に翻訳しなければ誤解を生む可能性があります。多くの場合WordやPowerPointなどのドキュメントでやり取りされ、翻訳精度が低いと誤解を生んだり信頼を損なったりする可能性があります。
・専門的な情報の正確な取得と活用
学術論文、医療・薬学関連の文献、技術マニュアルなど、専門的な資料を原文のままで理解するのはハードルが高いです。外国語を日本語で読む目的でも、正確に訳されたドキュメントで情報をスムーズに収集できれば、文書の理解度も格段にアップします。
・多言語化による市場拡大とブランドイメージの向上
自社の製品マニュアルやWebサイトの内容をドキュメント化し、多言語対応することはグローバル展開において非常に有効です。会社概要や製品情報の多言語化が不十分であれば閲覧するユーザーは少なくなります。また、多言語化していても訳抜けや誤訳がある場合ユーザーに誤解を与える可能性もあります。
以上のように、ドキュメントの翻訳は単に「外国語にするため。日本語で読むため」だけでなく、ビジネス拡大や情報共有の円滑化にも大きく寄与します。特に専門文書の翻訳精度が業務品質を左右するケースも多いため、十分に時間をかけて対応することが求められます。
主要なドキュメント形式と翻訳時の注意点
一口に「ドキュメント」といっても、扱うファイル形式によって翻訳のしやすさや必要な手順が変わってきます。ここでは、代表的なファイル形式ごとの特徴や、翻訳における注意点をまとめました。
【Wordファイル】
Wordファイル(.docxや.doc)は、自動翻訳との相性が比較的良い形式です。多くの自動翻訳で、Wordファイルの取り込み・翻訳ができます。ただし、文章中に表や図を挿入している場合、翻訳作業後にレイアウトが崩れることもあるため人によるチェックが必須です。
【Excelファイル】
Excelファイル(.xlsxや.xls)は、セルごとにテキストが分かれているため、自動翻訳ではセル単位での翻訳が行われることが多いです。表や数式を含んだ複雑なシートの場合、翻訳後に数式が壊れてしまうリスクもあるため、翻訳対象のセルとそうでないセルをしっかり分けておくことをおすすめします。
【PowerPointファイル】
PowerPointファイル(.pptxや.ppt)は、スライドごとにテキストが配置され、さらに図やアニメーションが含まれるケースがあります。オンライン翻訳ツールで一括翻訳した場合、図やレイアウトに不具合が起きやすいため、都度スライドを見ながらチェックする作業が必要です。ただし、最近はPowerPointファイル対応の翻訳サービスも増えてきており、レイアウトをある程度保ったまま翻訳可能な場合もあります。
【PDFファイル】
PDFファイルはレイアウトが固定化されており、翻訳ツールによっては文字情報をうまく読み取れないことがあります。画像として取り込まれた文字はOCR(光学式文字認識)で読み取る必要があるため、文章量が多い場合は手間がかかりがちです。
手軽でおすすめの自動翻訳
ドキュメントを翻訳できる自動翻訳はさまざまあります。誰でも使いやすい代表的なツールを挙げながら、それぞれのメリットや特徴を解説します。
Google翻訳
Google翻訳は無料で利用できる翻訳サービスの中でも特に有名です。130言語以上を翻訳でき、ブラウザ上でのテキスト入力だけでなく、ドキュメントをアップロードして翻訳できる機能も備えています。対応言語が非常に多く、操作が直感的なので初心者には最適です。
一方で、専門用語や文章構造が複雑な文書の翻訳精度はまだまだ向上の余地があるため、最終チェックは人の目で行うことをおすすめします。ビジネス文書などで、社外に公開するために翻訳を行う場合は、訳抜けや誤訳がないかチェックすることが大切です。
Microsoft Translator
Microsoftが提供する自動翻訳で、Office製品との連携がスムーズに行えます。WordやPowerPointのリボンメニューから直接翻訳機能を呼び出すことができるため、Microsoft 365を利用しているユーザーには大変便利です。
クラウドベースの翻訳エンジンを採用しており、メールやチャットでの翻訳機能も充実。ビジネスシーンでの簡易翻訳ツールとしても重宝されています。
Adobe Acrobatの翻訳機能
先述したとおり、PDF形式の文書はレイアウト保持が難しいという課題がありますが、Adobe Acrobatの機能拡張やプラグインを利用できます。OCRと連携してテキスト化し、そのまま自動翻訳することが可能です。
PDFしか手元にない場合や、PDF内に埋め込まれた画像をそのまま翻訳したいときに役立ちます。
セキュリティとプライバシー保護の視点
未公開情報や個人情報を含むドキュメントを翻訳する場合、セキュリティとプライバシー保護の観点も徹底しましょう。無料自動ツールでは、アップロードしたドキュメントや翻訳されたテキストが、サービス提供元で二次利用される可能性があります。機密文書を外部に漏らさないためには、以下の点に注意しましょう。
- ツールやサービスの利用規約を確認する
どのようなデータを保存し、どのように利用されるのかを事前に把握しておく必要があります。企業の機密情報を翻訳にかける場合、情報が外部に流出するリスクがないか十分に確認してください。 - オンプレミス型の翻訳ソリューションを検討する
クラウド上ではなく、社内サーバーやローカル環境で完結できる翻訳ソフトを導入すれば、データが外部に渡るリスクを低減できます。 - NDA(秘密保持契約)を結んだ翻訳会社に依頼する
自動翻訳の結果を自力で修正することが難しい場合やリソースが足りない場合は、翻訳サービス会社に依頼するのも一つの方法です。その際、NDA(秘密保持契約)の有無や翻訳者の情報管理体制を確認することが重要です。
自動翻訳だけではカバーしきれない専門用語とニュアンス
機械翻訳の精度は年々向上しているものの、専門用語や固有名詞が多用される文書、あるいは法律や契約などの厳密な表現が求められる文書では、まだまだ注意が必要です。
特に以下のような場面では、自動翻訳だけに頼らず専門家やネイティブによるレビューを検討するのが望ましいです。
- 医療・薬学分野の論文や診断書
- 契約書や法律文書(契約条項の厳密な理解が必要な場合)
- 特許申請書類や学術研究発表用の資料
- ブランドイメージに直結する広告コピーやキャッチフレーズ
これらの文書は、単純に単語を訳せばいいというものではなく、文脈や文化的背景を踏まえた表現が重要とされます。自動翻訳の結果に誤訳や不自然な訳が混じっていると、重大なトラブルを引き起こす可能性もあります。
自動翻訳をベースに下訳を行い、最終的なチェックや修正を人の手で行う「AIと人の協業」ならば、スピードと精度を両立できるでしょう。
翻訳品質を高めるコツ
ドキュメントの翻訳品質を上げるためには、事前準備と後工程でのチェックが重要です。ここでは、初心者でも取り組みやすい具体的なコツをいくつか紹介します。
- 原文の文章をできるだけシンプルに
自動翻訳は、長文や複雑な文構造が苦手です。長い一文を区切る、または難解な表現を避けるなど、原文を整えることで翻訳精度が向上します。専門用語や固有名詞は最初にリストアップしておき、一貫して同じ表記を使うようにしましょう。 - 翻訳前にフレーズ集・用語集を準備する
「用語集」とは、特定の分野で頻出する専門用語とその訳語をまとめたものです。たとえば、エンジニアリング関連の文書であれば、「figure」という単語を「図形」と訳すように、専門用語の訳語を定めておきます。これを自動翻訳に適用することで、誤訳を防ぎやすくなり翻訳精度も高まります。 - レイアウトや図表の扱いに注意する
WordやPowerPointには表や図、テキストボックスが挿入されていることがよくあります。翻訳ツールがそれらの要素を正確に処理できない場合、翻訳後にレイアウトが崩れたり、一部のテキストだけ翻訳されないケースが発生します。翻訳対象のテキストを選択範囲で指定するなど、事前に文書構成を把握しておくことが大切です。 - 最終チェックを徹底する
自動翻訳を使った後は必ず人の目で確認することが必要です。どのような文書でも一語の違いが大きな誤解を招く恐れがあります。複数人で校正を行う、専門家のレビューを受けるなどチェックを徹底することが翻訳品質のアップにつながります。
専門性の高い文書を翻訳する際の注意点
医療、法律、ITなどの分野で専門用語が多く含まれる文書では、無料翻訳ツールだけでは正確性に不安が残ります。以下のような内容が含まれる文書は、特に注意が必要です。
医療・薬学関連の文献
症状や薬品成分名などに誤訳があると、患者や利用者に深刻なリスクをもたらす可能性があります。論文や学会発表用の資料を翻訳する際は、医療翻訳に精通した翻訳者のチェックを受けましょう。
法律・契約書
契約の条文や法的拘束力を持つ表現は、ニュアンスを誤ると大きなトラブルに発展します。法務専門の翻訳会社や、弁護士の監修を受けるなど、慎重な対応が求められます。
特許・学術研究発表
特許や学会発表資料には、非常に専門性の高い用語がいくつも登場します。自動翻訳で下訳をつくり、専門知識を持つ翻訳者にチェックしてもらうのが理想です。
ヤラクゼンは、八楽株式会社が提供するCATツール(Computer Assisted Translation)で、自動翻訳はもちろん編集・共有、翻訳会社への発注まで行うことができます。これにより、ユーザーはこれらのファイルを迅速かつ効率的に翻訳することが可能となります。
ヤラクゼンでのドキュメント翻訳の手順
ヤラクゼンはAI技術を活用した自動翻訳プラットフォームであり、PDF、Word、Excelなど多様なドキュメント形式に対応しています。
もちろんドキュメントの翻訳も可能で、カンパニープランであれば定額で翻訳文字数の制限なしで毎月使い放題です。以下では、ドキュメントを翻訳する方法を簡単にお伝えします。
ドキュメントのアップロード
ヤラクゼンのインターフェース上で、翻訳したいドキュメントをドラッグ&ドロップするか、ファイル選択メニューからアップロードします。
翻訳言語と翻訳エンジンの
まず原文の言語と翻訳先の言語を指定します。

ヤラクゼンは複数の翻訳エンジンを搭載しており、Google翻訳、Microsoft Translator、Papago、ChatGPT、Claude、NICT※などから選択できます。 文書の内容や専門性に応じて最適なエンジンを選ぶことで、翻訳精度を向上させることが可能です。
(※NICTは有料オプション)
自動翻訳の実行
設定が完了したら、翻訳を開始します。ヤラクゼンはスピーディーに高精度な翻訳を提供し、短時間で結果を得ることができます。

翻訳結果の確認と編集
翻訳が完了したら結果をプレビューし、必要に応じて編集を行います。この段階で、誤訳や訳抜けがないかを確認します。
翻訳のプレビューを見ながらポストエディットが可能

ヤラクゼンでは、翻訳結果の画面で翻訳したドキュメントのプレビューを表示しながらポストエディット(翻訳文の修正)を行うことが可能です。この機能により、以下のようなメリットが得られます。
- レイアウトの確認と保持: 翻訳後のドキュメントが原文と同様のレイアウトで表示されるため、図表や画像の配置、フォントスタイルなどの視覚的要素を確認しながら翻訳文を編集できます。
- 文脈の把握:プレビューを見ながら編集することで、文章全体の流れや文脈を把握しやすくなります。これにより個々の文だけでなく、全体を把握しながら修正が可能です。
プレビュー機能を活用することで、出来上がりをイメージしながらポストエディットすることが可能です。ヤラクゼンでは、自動翻訳からポストエディットまで一貫してできるため翻訳業務の効率化と翻訳品質の向上につながります。
まとめ:ニーズに合ったドキュメントの翻訳方法
ここまで、ドキュメント翻訳の重要性や基本的な手順、主要ツールの特徴、専門文書を扱う際の注意点などを解説してきました。押さえておきたいポイントは以下の3点です。
- ファイル形式やレイアウトに応じて最適な翻訳手段を選ぶ
- 自動翻訳を活用しつつもポストエディットは必須
- セキュリティ面や専門用語の正確性に配慮し、不安な場合は専門サービスを利用する
WordやExcel、PowerPointといった形式は自動翻訳にかけるのは可能ですが、表や図表、数式によるレイアウト崩れや訳抜けが起こるため、人の目での最終確認が必要です。PDFでは文字情報の抽出が困難な場合があり、OCRが必要となることもあります。
医療や法律など専門性の高い分野では誤訳が重大なリスクにつながり、ネイティブや専門家の監修が推奨されます。翻訳精度を高めるには、原文を整理し用語集を準備するとともに、機密情報の扱いには細心の注意が必要です。
ヤラクゼンは様々なファイル形式に対応し、複数の翻訳エンジンから選択できるCATツールで、自動翻訳とポストエディットを一貫して行えます。カンパニープランなら定額で文字数無制限に使え、業務効率と翻訳品質の向上を同時に実現します。
ヤラクゼンでは法人担当者の方向けに2週間の無料トライアルをご用意していますので、ドキュメントの翻訳の際にはぜひ一度ご利用
ください。


この記事の執筆者:Yaraku ライティングチーム
翻訳者や自動翻訳研究者、マーケターなどの多種多様な専門分野を持つライターで構成されています。各自の得意分野を「翻訳」のテーマの中に混ぜ合わせ、有益な情報発信に努めています。