クラウド翻訳とは、インターネットを通じてクラウド上の自動翻訳を利用し文章や文書を他言語に自動翻訳するサービスを指します。例えばGoogle翻訳など、Webサイト上で使える自動翻訳はクラウド翻訳にあたります。
従来はソフトをパソコンやサーバーにインストールして利用する形の翻訳ソフトが中心でした。しかし最近はGoogle翻訳をはじめ、ネット上の自動翻訳を誰でも簡単に使えるようになりました。
この記事では、クラウド翻訳の主なサービスやその特徴について簡単にご紹介したいと思います。
主なクラウド翻訳サービスとその特徴
ここからは、代表的なクラウド翻訳サービスを3つ取り上げ、それぞれの特徴や導入事例を紹介します。なお、サービス名のリンク先は公式ページですので、ブラウザで開いて一緒に試してみましょう。
Google翻訳
Google翻訳は「翻訳サイトと言えばこれ!」というくらいにメジャーな翻訳サイトです。対応言語数は130言語以上と、無料の翻訳サイトの中でトップクラスです。テキストの翻訳だけでなくファイル翻訳にも対応しており、さらに画像(内にある文字)の翻訳、ウェブサイトの翻訳にも対応しています。
Googleアカウントにログインした状態であれば、一度翻訳した文章をお気に入り保存することが可能です。またGoogle翻訳の画面上から、翻訳文をメールやXで共有する機能もあります。
無料で使えるのに回数制限がない点が嬉しいポイントですが、セキュリティ保証はない点に注意しなければなりません。マニュアル等のかたい文章、ビジネスでの挨拶といった定型文の翻訳に向いた翻訳サイトなので、そのような文書を翻訳したい方におすすめです。
対応言語数 | 130言語以上 | 無料のセキュリティ保証 | 二次利用の可能性あり |
ファイル翻訳 | docx、pdf、pptx、xlsx | 有料プランの有無 | 無し |
翻訳回数/月 | 無制限 | 有料プランの特徴 | 無し |
文字数制限/回 | 5,000文字まで | 会員登録 | 有り |
ファイル翻訳の制限 | 不明 | その他機能 | スマホアプリでカメラを使って翻訳可 |
→ Google翻訳
Microsoft Translator
Google翻訳と比べると認知度は少し下がりますが、Microsoft Translatorも優秀な翻訳サイトです。Google翻訳に次ぐ120言語以上に対応していますが、形式はテキスト翻訳のみでファイルの翻訳には対応していません。
Microsoft Translatorの特徴としては音声入力にも対応しており、読み上げた音声をリアルタイムで翻訳してくれます。また様々なシーン(旅行や食事、ビジネスなど)ごとに、想定されるフレーズを用意し、それらを翻訳する機能もあります。
ITに関する翻訳が得意なサイトなので、IT系用語を多く使っている文書を翻訳したい方におすすめです。
対応言語数 | 120言語以上 | 無料のセキュリティ保証 | 不明 |
ファイル翻訳 | 無し | 有料プランの有無 | 無し |
翻訳回数/月 |
無制限 | 有料プランの特徴 | 無し |
文字数制限/回 | 1,000文字まで | 会員登録 | 有り |
ファイル翻訳の制限 | 対応無し | その他機能 | 音声入力に対応 |
Amazon Translate
Amazon Translate は、Amazon Web Services(AWS)の一部として提供される自動翻訳サービスです。AWSの多彩なサービスと組み合わせることで高度なシステムを構築できるのが特長です。また、ニューラル機械翻訳(NMT)を採用し、多数の言語を高い精度で翻訳できるよう設計されています。
AWSの他のサービス(EC2やS3、Lambdaなど)と組み合わせることで、大規模なウェブサイトやアプリケーションにもスケーラブルに翻訳機能を統合可能です。課金は従量制が基本で、使用した文字数やリクエスト数に応じて料金が決まるため、必要な時に必要なだけの翻訳を行えるのがメリットです。
対応言語数 | 70言語以上 | 無料のセキュリティ保証 | 不明 |
ファイル翻訳 | TXT、HTML、DOCx、PPTxなど | 有料プランの有無 | 有料(従量課金制) |
翻訳回数/月 | 不明 | 有料プランの特徴 | 入力データの暗号化 |
文字数制限/回 | 1,000文字まで | 会員登録 | 有り |
ファイル翻訳の制限 | 不明 | その他機能 | 不明 |
選び方のポイント:サービスを比較する基準
ここではクラウドの自動翻訳を選ぶ際に押さえておきたい基準をご紹介します。
1.翻訳精度と対応言語数
ビジネス文書のように正確さが求められるものから、SNS投稿やブログ記事などライトな翻訳まで、どんな文章をどの言語ペアで翻訳するのか明確にしましょう。
Google翻訳やBing Microsoft Translatorは言語数が多いサービスです。ニュースや論文などのかたい文章にはGoogle翻訳、IT用語が多い文章にはBing Microsoft Translatorが良いと一般的に言われています。
2.セキュリティとプライバシー
業務上で扱う文書に機密情報が含まれる場合は、データの取り扱い方針を必ず確認しましょう。自動翻訳にかけた文章が翻訳品質の改善のために二次利用されるケースもあります。
3.カスタマイズ性(カスタムモデル・用語集機能)
特定の業界や専門用語を正しく翻訳するには、用語集やフレーズ集、過去の翻訳文などを参照できる翻訳メモリを活用できると便利です。
ポストエディットが必要となる理由
自動翻訳の訳出結果を人の手で編集することをポストエディット(後編集)といいます。
- 自動翻訳の限界
- 学習データの偏りや言語構造の違いにより、誤訳や文脈に合わない訳が生成される場合があります。
- 特に日本語から外国語にする場合、日本語では主語が省略されることが多く、意図する主語がうまく翻訳されないケースがあります。
- ビジネス文書や法律文書、技術マニュアルなどでは、一言一句の正確性が重要となるため、ポストエディットを行う必要があります。
- ニュアンスや文体の調整
- 自動翻訳ではニュアンスをうまく翻訳するのは難しいことがあります。
- 敬語表現やカジュアルな口調など、対象読者や文書の目的に応じた翻訳をするには、最終的に人のチェックが欠かせません。
- ブランドイメージや法的リスクへの配慮
- 法律文書や契約書などで企業名、サービス名などの固有名詞に誤訳があると、大きなリスクにつながる場合もあります。また数字の訳抜けなどがないかも確認する必要があります。
ポストエディットの具体的なやり方
- 原文との対比で誤訳を洗い出す
- ソース文と機械翻訳の結果を並行して読み、意味が大きくずれていないかを確認します。
- 専門用語や固有名詞が誤っている場合は、正しい訳語や用語集の指示に従って修正しましょう。
- 文法・語順の調整
- 英語から日本語への翻訳では、英語の語順がそのまま残り、ぎこちない表現になることがあります。
- 読み手にとって自然な構文や語順になるよう、動詞や修飾語の配置を適切に修正します。
- 文体・トーンの補正
- ビジネス文書、学術論文、広告コピーなど、文章の性格に合わせて文体を選択します。
- 敬語表現や丁寧語を使うべき部分と、カジュアルな表現を用いるべき部分を見極め、トーンを調整します。
- 統一性のチェック
- 長文や複数の章から成る文書では、用語やフレーズのブレが生じないようにします。
- 同じ概念や事柄には同一の訳語を使うなど、読み手が混乱しないように意識して統一します。
- ポストエディットについては以下で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
- ポストエディットが完了したら、一度通読し、誤解や読みづらさが残っていないかをチェックします。
- 必要に応じて接続詞の追加や文の再構成などを行い、自然な流れの文章に仕上げます。
ポストエディットについては以下で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
用語集やフレーズ集の活用
一部の自動翻訳サービスでは翻訳データを用語集・フレーズ集という形で保存し、活用できます。ここでは用語集やフレーズ集を活用することのメリットをご紹介します。
- 翻訳結果の統一性を向上
- 用語集(Glossary)やフレーズ集をあらかじめ用意しておくことで、訳語を統一でき、表現の揺れを最小限に抑えられます。
- 「顧客」を“client”とするのか“customer”とするのかなど、組織や文脈に応じて適切に設定します。
- 自動翻訳の事前学習に活用
- 専門用語や固有名詞の訳し方を事前に学習データへ反映できれば、ポストエディットの手間が減り、作業効率が向上します。
- 翻訳支援ツール(CATツール)との併用
- 翻訳メモリ機能が搭載されたツールを用いれば、過去に決定した訳文を再利用しやすくなります。
- 複数名で翻訳プロジェクトを進める場合にも、用語集を共有しながら同じ基準で作業できるため、訳文の品質を均一に保ちやすくなります。
翻訳品質を高める「ヤラクゼン」
ヤラクゼンは、AI自動翻訳と人手の編集を組み合わせた革新的なAI翻訳プラットフォームです。直感的なUIに加え、誰でも簡単に高品質な翻訳を行うことができます。
特に翻訳後の編集や、翻訳にかけた文章の二次利用、固有名詞などの翻訳結果について、以下のように解決します。
ポストエディットの効率化

ヤラクゼンは、複数の翻訳エンジンを標準搭載しており、用途に応じて最適なエンジンを選択できます。自動翻訳後のポストエディットをサポートする機能も充実しており、翻訳結果の品質向上と作業効率の改善が可能です。
また並列ビューでは一文ずつ横に並べて表示されるので編集がしやすく、ファイル翻訳の場合は翻訳結果のプレビューを見ながら編集・修正できるため、翻訳作業の効率化につながります。
強固なセキュリティ対策
無料の自動翻訳を使用すると情報漏洩の可能性があります。
ヤラクゼンでは、アカウントごとに翻訳データを個別管理し、他のユーザーや企業へのデータ流出を防止しています。これにより、機密性の高い文書でも安心して翻訳作業を行うことができます。(※カンパニープラン・プレミアムプラン)
用語集・フレーズ集の活用

翻訳の統一性を保つためには、専門用語や定型表現を統一させることが重要です。
ヤラクゼンでは、用語集やフレーズ集を作成・共有できる機能を提供しており、チーム内での翻訳品質の均一化を実現します。これにより、過去の翻訳資産を有効活用し、作業効率を向上させることが可能です。
これらの機能により、ヤラクゼンは翻訳業務におけるさまざまな課題を解決し、ビジネスのグローバル展開を強力にサポートします。
まとめ
クラウド翻訳は、最新のニューラル機械翻訳技術を活用し、世界中の情報へアクセスするハードルを大幅に下げる画期的なサービスです。Google翻訳、Microsoft Translator、Amazon Translateでは、それぞれ対応言語数や特徴が異なります。
利用する際は対応言語数、セキュリティなどを総合的に比較してニーズに合ったサービスを選びましょう。
ただ、自動翻訳は日々進化していますが、誤訳や文脈に合わない訳が生じることがあります。ビジネス文書や法律文書など、正確性が求められる文章では、ポストエディット(翻訳後の人間による修正)が必要です。ポストエディットがやりやすいヤラクゼンを活用して、日々発生する翻訳の質を高めてください。


この記事の執筆者:Yaraku ライティングチーム
翻訳者や自動翻訳研究者、マーケターなどの多種多様な専門分野を持つライターで構成されています。各自の得意分野を「翻訳」のテーマの中に混ぜ合わせ、有益な情報発信に努めています。
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