Yarakuzen
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2024 年 7月 29 日

IRの翻訳で必須のポイントと内製化のメリット【日英同時開示向け】

IR 翻訳

東証プライム市場のIR資料英文開示義務化が2025年3月に迫る中、多くの企業が翻訳対応を迫られています。さらに、日本取引所グループは、プライム市場以外のスタンダード市場やグロース市場の企業にも自主的な英文開示を推奨しています。

英文開示を行っているものの、日本語開示後に英語版を準備・開示している企業も多いのではないでしょうか。

本記事ではIR情報の日英同時開示のためにIR翻訳で押さえるポイントと、IR翻訳を内製化するメリットを詳しく解説します。

 

 

【目次】

 

 

IR資料を英文開示する重要性

IR資料の英語翻訳は、海外からの投資を呼び込むには欠かせない資料です。ここからは、IR資料を英文開示する重要性を詳しく解説します。

 

海外投資家に向けた情報開示

IR資料の英文開示が必要な理由は、海外投資家の投資判断に直結するからです。日本取引所グループの海外投資家向けアンケートによると、58%が「上場企業の英文開示資料を投資判断の主要情報源として活用している」と回答しました。

 

IR 翻訳
出典:日本取引所グループ「英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果(2023年8月)

さらに注目すべきは「新規投資の際に日本企業の英文開示資料を利用するか」という問いに対し、実に90%が「必ず利用する」「ほとんどの場合で利用している」と回答しています。

 

これを見ると、ほぼすべての海外投資家が英文のIR資料を重視していることを明確に示しています。このリスクを回避し、グローバル市場での企業競争力を維持するためには、質の高い英文IR資料の作成と開示が必要なのです。

 

新たな投資家を呼び込める

同アンケートでは、日本企業の英文IR資料に「不満がある」と回答した海外投資家が69%にも上っていることがわかります。

 

IR 日英同時開示
出典:日本取引所グループ「英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果(2023年8月)

しかし、この結果は逆に言えば大きなビジネスチャンスとも言えます。

競合他社が海外投資家の期待に応えられていない現状で、正しい英文IR資料を開示できれば、投資先としての魅力が劇的に向上する可能性があります。正しい英文IR資料の作成と開示は、新たな投資家を呼び込む強力な武器になります。

 

 

IR資料の英文開示の課題

IR資料の英文開示の課題にはどのようなものがあるのでしょうか。大きく3つにまとめてみました。

  • 日本語資料との同時開示
  • 翻訳ミスのリスク
  • 翻訳業務のコスト増加

 

日本語資料との同時開示

今回の東証プライム市場のIR資料英文開示義務化では、日本語と英語のIR資料を同時に公開することが求められます。日本語版IR資料の制作後、翻訳会社への外注による英語化という手順が一般的ですが、この場合対訳の工程や時間がかかってしまいます。

現在、日本語資料作成後に英語版を作成している企業は、2025年3月末までに新体制の構築が必須です。対応が遅れると、証券取引所の未対応リストに掲載されるリスクがあります。それを踏まえると実質的な準備期限は2024年内で、これまでにスムーズにIR資料を日英同時に準備できる体制を整えておくと良いでしょう。

 

翻訳ミスのリスク

翻訳ミスや誤字・脱字は、単なるミスではありません。投資家の意思決定プロセスを大きく歪める可能性があります。誤った情報に基づいて判断した投資家は、予期せぬ株価変動に巻き込まれ、重大な損失を被るリスクがあります。

さらに深刻なのは、不正確な情報開示が企業自体に及ぼす影響です。誤った情報提供は法的責任の問題につながり、企業は訴訟リスクにさらされる可能性があります。こうした事態は、企業の財務状況を直接的に脅かします。

また、翻訳ミスによる誤情報が公になることで、企業の評判や信頼性が著しく損なわれる危険性があります。市場におけるブランドイメージの低下は、短期的な株価下落だけでなく、長期にわたる企業価値の毀損につながりかねません。

 

翻訳業務のコスト増加

IR翻訳は単に英語に翻訳するだけでは終わりません。社内での厳密な用語チェックや誤字脱字の確認など、最終的には社内のIR担当者による確認作業が不可欠です。この作業は日本語版と英語版の両方で必要となるため、実質的にチェック作業量が2倍になります。その結果、より多くの人員と時間が必要となり翻訳業務のコスト増加につながります。

このように、IR資料の英文同時開示に対応するためには、コスト面、クオリティ面でも解決すべき課題が多いことがわかります。

 

 

IR翻訳の方法:翻訳会社と自動翻訳の比較

IR翻訳の方法として翻訳会社へ依頼した場合と、自動翻訳ツールを使用した場合の特徴を各項目ごとに比較しました。

 

項目

翻訳会社

無料の翻訳ツール

費用

文字数が増えるごとに料金が変動するため、ページ数が多い資料ではコストは高い

翻訳ツールの利用費用のみ発生するためコストは安い

セキュリティ

守秘義務契約を結ぶことで、機密情報の保護が可能だが、未公開情報の漏洩リスクは防ぎきれない

未公開情報や機密情報がデータ収集され、ツールの分析に利用されるリスクがある

精度

専門家による翻訳と校正により、誤字脱字のリスクは軽減される

業界特有の専門用語や固有名詞などの誤訳ミスが起きる可能性がある

期間

通常10〜12営業日程度必要。急ぎの場合は追加料金がかかる場合もあり、コストが増える

即時翻訳が可能だが、正確性に欠けるため、必ず人間による確認が必要

 

ここからは、各項目別に詳細を解説します。

 

費用

まずは費用です。翻訳会社に翻訳を依頼した場合、一般的な相場の1文字あたり約25円として、この単価を基にIR資料の翻訳コストを試算しました。

 

決算短信

決算短信を約20ページ、15,000文字程度と仮定した場合、翻訳費用は375,000円です。(15,000文字 × 25円 = 375,000円)。これだけでも相当な出費ですが、これは一部に過ぎません。

 

有価証券報告書

有価証券報告書を100ページ以上、75,000文字と仮定した場合、翻訳費用は1,875,000円にも上ります。(75,000文字 × 25円 = 1,875,000円)

 

この他、四半期報告書(年4回)や決算説明会資料(年2~4回)など、定期的に発生する他の重要文書も入れる必要があります。上記すべてを合算すると、IR資料翻訳の年間総コストは数百万円、場合によっては1千万円を超える可能性があります。

翻訳ツールを利用した場合、自動翻訳ツールは基本的にツールの利用料のみで外注費用は発生しません。無料トライアルが用意されているツールもあります。

 

セキュリティ

東証プライム市場の上場企業にとって、IR資料の掲示は避けて通れません。しかし、この過程で最も注意すべきは未公開情報の漏洩リスクです。情報漏洩は企業価値を大きく毀損させる可能性があります。その影響は株価の暴落、訴訟リスク、さらには長期的な信用失墜など、多岐にわたります。

 

翻訳会社へ委託する時は信頼性の高い翻訳パートナーを選ぶことが重要です。そして機密保持契約を締結することも必須です。しかし、契約だけでは完全な安全性を担保できません。特に極めて機密性の高い未公開情報については、外部委託を一切行わないという判断も必要です。

 

このような場合、自動翻訳ツールの導入も検討しなければなりませんが、翻訳ツールにもデメリットはあります。一般に流通している多くの無料ツールは、利用規約において翻訳された文章を品質向上のために二次利用する権利を留保しています。企業の機密情報が知らぬ間に外部のデータベースに蓄積され、分析されるリスクがあります。

 

精度

IR資料における翻訳ミスや誤字・脱字は、企業と投資家の両方に深刻な影響を及ぼす可能性があります。不正確な翻訳は投資家の判断を誤らせ、結果として予期せぬ株価変動を引き起こします。これは投資家に不測の損失をもたらし、市場の公平性と企業のブランドイメージを損なう大きな問題です。

 

このリスクを回避するためには、財務・法務の専門知識がある翻訳会社を選ぶことが重要です。また、近年では最新のAI技術を活用した翻訳支援ツールも開発されています。企業独自の専門用語や表現を統一するための辞書機能が搭載されていれば、一貫性のある翻訳も行いやすくなり、人間のチェック作業の効率化につながります。

 

期間

従来の翻訳プロセスでは、日本語版IR資料の完成後に翻訳会社へ発注するケースが多く見られました。しかし、翻訳会社にIR資料の翻訳を依頼した場合、資料の種類や量によって異なりますが、約10〜12営業日程度かかります。そのため、日本語版IR資料の完成後に翻訳会社へ発注するケースでは日英の同時開示に間に合わなくなるリスクが高くなります。

 

自動翻訳ツールを利用する場合は大幅に時間の短縮が可能ですが、完全に正確な結果を保証するものではありません。特にIR資料では、一つのミスが企業の透明性や海外投資家との信頼関係を損なう恐れがあるため、必ずIR担当者などによる確認や修正作業が必須です。

 

 

IR翻訳を内製化にするメリット

ここまで解説してきたように、翻訳会社に依頼した場合と、自動翻訳ツールを利用した場合、それぞれに課題があることがわかりました。

ここからは、その課題を解決するために翻訳業務を内製化にするメリットを解説していきます。

 

自動翻訳ツールの利用料のみで使用可能

翻訳会社への依頼と比較して、自動翻訳ツールでは基本的に利用料のみで翻訳が可能です。

ただし、ツールの選定には専門的知識が必要であり、IR資料の特性に適した機能を持つものを選ぶことが重要です。適切なツールの導入は、翻訳コストの削減と品質向上の両立に役立ちます。

 

社外に情報漏洩のリスクがない

翻訳作業を内製化した場合、外部に情報漏洩されるリスクを軽減できる点が大きなメリットになります。特に、未公開情報も含まれるIR資料の場合には社内に対しても注意を払わなければなりません。

社内で翻訳プロセスを内製化することで、IR資料以外のプレスリリース、契約書など、機密性の高い他の文書にも応用可能です。日英同時開示に備えた翻訳業務の内製化は、さまざまな業務のグローバル展開に繋がる可能性もあるのです。

 

翻訳ミスの目視チェックのみで大幅に時間短縮

翻訳会社に依頼した場合でも、企業固有の専門用語など担当者の目視チェックは必要でした。ですが、社内で日本語版と英文版を同時に制作できれば、目視チェックをする項目が明確になり、より正確で信頼性の高いIR資料の作成が可能になります。

 

現在では自動翻訳技術の進歩により、高品質なAI翻訳ツールが登場しています。翻訳後の文章をチェックする項目をサポートしてくれるアシスト機能を活用すると、目視チェックの過程も大幅に効率化することが可能です。

 

 

人+AIの翻訳「ヤラクゼン」でIR英語化を簡単に

これまで解説した通り、翻訳会社を利用する場合、自動翻訳ツールで翻訳した場合、どちらでも必ず人の手で確認・修正する必要があります。

特に、従来の自動翻訳ツールでは、翻訳後の編集機能が充実していないものが多く、翻訳後の文章を確認するために別画面に移動する手間がありました。

 

しかし、ヤラクゼンでは翻訳前後の文章を一つの画面で横並びに表示できるので、簡単に比較しながら編集が可能です。この機能により、誤訳や不自然な表現を容易に見つけ出せるため、編集作業の効率が劇的にアップします。

 

その他、ヤラクゼンにはこの機能以外にも下記の3つの強みがあります。

 

大手企業や大学など1,000社以上の導入実績

ヤラクゼンでは、大手メーカー(自動車・エレクトロニクス)や大学、IT企業など1,000社以上の導入実績があります。IR資料などの重要文書には、公開前に非公開情報が含まれることも多くありますが、ヤラクゼンのカンパニープランでは、翻訳された文章の二次利用がないため、機密性の高い情報や重要文書も安全に翻訳可能です。

 

その他、ヤラクゼンは、SSLによる通信の暗号化、24時間365日のシステム監視、定期的な脆弱性テストとファイアウォールの強化により、データの安全性を確保しています。さらに、ISO/IEC 27001:2013の認証を取得しており、高度な情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)で運営しています。企業の機密情報や個人情報の保護を最優先にした環境を整えております。

これらの豊富なセキュリティ対策により、1,000社以上の企業様に導入いただいております。

 

AIによる翻訳ミスのチェックアシスタント機能

ヤラクゼンには、編集を支援するチェックアシスタント機能が備わっています。

英語が苦手な方でも簡単に間違いが発見できるように、自動翻訳後にどの部分を修正すべきかが分かりやすく色別で表示されます。

AIが自動的に問題箇所をハイライトし、修正箇所を可視化するため、翻訳に不慣れな人でも簡単に修正作業が行えます。この機能により、誰でも高品質な翻訳を実現できます。

 

さらに、コラボレーション機能を使えば、社内の他の担当者にも簡単にシェアすることができます。翻訳後の内容を社内で共有し、それぞれのフィードバックを取り入れながら、最終的な翻訳内容を確定するプロセスがスムーズに進行します。

これにより、より正確でクオリティの高い翻訳を迅速に提供することが可能です。

 

IR翻訳に特化した翻訳エンジンやChatGPTの搭載

ヤラクゼンでは、近年話題のChatGPTの他、Google翻訳、Microsoft翻訳など複数の自動翻訳エンジンを標準で搭載しています。翻訳内容に応じて、翻訳エンジンの使い分けが可能です。自動翻訳+ポストエディット(後編集)で品質を高め、使えば使うほどヤラクゼンが学習して翻訳精度が向上します。

 

また、法人プランではオプションとして業種に特化した翻訳エンジン「みんなの自動翻訳@KI(商用版)」を搭載しています。

汎用、特許、法令契約、金融(IR/ 適時開示)、金融サービス、サイエンスの6つの分野から選べます。

→使える翻訳エンジンの詳細はこちら

 

 

IR翻訳のまとめ

今や企業の IR 活動はグローバルな視点が欠かせません。特に東証プライム市場上場企業には 2025年3月までにIR 資料の日英同時開示が求められています。この課題を乗り越えるカギは、最新の AI 翻訳ツールを活用した翻訳業務の内製化です。

ヤラクゼンでは、自動翻訳と人手翻訳を組み合わせたハイブリッドアプローチを採用することで、翻訳の質を高めながら時間とコストを大幅に削減できます。もちろん、社内で完結するためセキュリティ面でも安心です。

ぜひ、自社に合ったツールを見つけてビジネスのグローバル展開の準備を進めていきましょう。

 

 

ヤラクゼンのカンパニープランは、法人限定で2週間の無料トライアルをご用意しています。トライアル終了後も有料プランに自動継続になることはありませんので、お気軽にご登録ください。みなさまのお問い合わせお待ちしております。

IR free trial

 

 

WriterTeam

この記事の執筆者:Yaraku ライティングチーム

翻訳者や自動翻訳研究者、マーケターなどの多種多様な専門分野を持つライターで構成されています。各自の得意分野を「翻訳」のテーマの中に混ぜ合わせ、有益な情報発信に努めています。